コーヒーは、世界中で愛される飲み物の一つであり、その歴史は非常に古く、豊かです。今回の記事では、コーヒーの起源からその歴史的な発展、そして現代に至るまでの経緯をご紹介します。
コーヒーの起源
コーヒーの起源についての最も古い記録は、エチオピアの高地にまで遡ります。9世紀頃、エチオピアの山岳地帯でヤギ飼いの少年カリディが、自分のヤギが赤いベリー(コーヒーチェリー)を食べた後に活発に動き回るのを発見しました。カリディ自身もそのベリーを食べてみると、同様に元気が出ることを実感しました。
このエピソードは伝説として広く知られていますが、実際の歴史的証拠はほとんどないらしいです。
コーヒーの広がり
エチオピアで発見されたコーヒーは、次第に中東へと広がりました。13世紀には、アラビア半島のイエメンでコーヒーが栽培され始めました。特にスーフィーの修行者たちは、夜の祈りや瞑想の際に眠気を防ぐためにコーヒーを利用していました。この時期にコーヒーは「qahwa(カフア)」と呼ばれ、エチオピアのものとは異なる製法で作られていました。
16世紀には、コーヒーがオスマン帝国の首都コンスタンティノープル(現イスタンブール)に到達し、コーヒーハウスが登場しました。これがヨーロッパにおけるコーヒーハウス文化の始まりとなりました。コンスタンティノープルでは、コーヒーハウスが社交の場として人気を博し、人々が集まり、議論や情報交換を行う場所として機能しました。
ヨーロッパへの伝播
コーヒーと言えばヨーロッパのイメージが強い人も多いのではないでしょうか?
コーヒーがヨーロッパに伝わったのは17世紀のことです。
最初にコーヒーがヨーロッパに紹介されたのは、ヴェネツィアの商人によるものでした。ヴェネツィアでは、商人が中東から持ち帰ったコーヒーが紹介され、徐々に人気が広がりました。ヨーロッパ各地にコーヒーハウスが登場し、知識人や商人の集う場として機能しました 。
特にイギリスのロンドンでは、コーヒーハウスが「ペニー・ユニバーシティ」と呼ばれるほど、情報交換や議論の場として重要な役割を果たしました。また、フランスやドイツ、オランダなどでもコーヒーハウス文化が発展し、社会的な交流の中心となりました。
アメリカ大陸への広がり
18世紀には、コーヒーはアメリカ大陸にも広がりました。ブラジルやカリブ海諸島でのコーヒー栽培が始まり、これが世界的なコーヒー生産の基盤となりました。特にブラジルは、現在も世界最大のコーヒー生産国として知られています。
アメリカ合衆国では、1773年のボストン茶会事件を契機に、紅茶の代わりにコーヒーが広く飲まれるようになりました。これにより、アメリカでもコーヒー文化が根付くこととなりました。
日本におけるコーヒーの歴史
ところで日本にコーヒーが伝わったのはいつなのでしょうか?
日本にコーヒーが伝わったのは、江戸時代の鎖国政策の中で長崎の出島に住むオランダ人によるものでした。オランダ商館の医師として来日したフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが、1823年に日本にコーヒーを持ち込みました。しかし、当時の日本ではコーヒーはほとんど飲まれず、主に薬用として利用されていました。
その後、明治時代に入ると西洋文化が急速に広まり、コーヒーも一般的に飲まれるようになりました。東京の銀座には、日本初のコーヒーハウスである「可否茶館」が開店し、多くの人々が訪れる人気スポットとなりました。大正時代には、モダンガールたちが集うカフェが流行し、コーヒー文化がさらに発展しました。
現代のコーヒー文化
現代において、コーヒーは世界中で消費され、多様な文化が形成されています。スターバックスをはじめとするグローバルなコーヒーチェーンの登場により、カフェ文化はさらに広がりました。また、スペシャルティコーヒーの流行により、コーヒーの品質や産地、焙煎方法にこだわる消費者も増えています。
コーヒーの流行についてはこちらの記事をごらんください。
さらに、環境や倫理的な観点から、フェアトレードやオーガニックコーヒーの需要も高まっています。近年でいうと2050年問題なんかが、トレンドですよね。2050年問題についてはまた別記事で紹介します。
このように、コーヒー産業のトレンドは持続可能な方向へと進んでいます。
まとめ
コーヒーの起源から現代に至るまで、その歴史は長く複雑です。エチオピアでの発見から始まり、イスラム世界を経てヨーロッパに広がり、最終的には世界中で愛される飲み物となりました。コーヒーは単なる飲み物にとどまらず、社会的な交流や文化の発展に大きな影響を与えてきました。これからもコーヒーは、多様な文化や価値観を反映しつつ、私たちの日常に寄り添い続けることでしょう。
コーヒーをただ飲むのみならず、文化や歴史という視点で見てみるのも面白いですね。
コーヒが好きなあなたにおすすめの書籍
メリー・ホワイト, 『コーヒーと日本人の文化誌』, 創元社, 2016年
旦部幸博, 『珈琲の世界史』, 岩波書店, 2018年.
マーク・ペンダーグラスト, 『コーヒーの歴史』, 新潮社, 2019年.